企業TOPインタビュー

社員とその家族を幸せにすること。札幌をスイーツの街にすること。

株式会社きのとや
代表取締役会長 長沼 昭夫

更新日:2016年11月11日

1947年10月11日生まれ(69歳)
札幌市出身、札幌西高校・北海道大学水産学部卒業後、酪農業を創業、大手流通業でのバイヤー職を経て、1983年「洋菓子きのとや」を札幌市白石区に創業。
2002年札幌洋菓子協会会長に就任、2006年スイーツ王国さっぽろ推進協議会会長に就任。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

経営目的は「社員とその家族の幸せを実現すること」

創業(1983年)から33年が経過しましたが、創業から15年くらいの間は、そんなに社員のことを考える余裕などなかったというか、正直に言って会社を維持していくことで精一杯でした。そしてある程度安定感が出てきて少し経営に余裕が出てきて、何となく明日つぶれることはないだろう、と思い始めたそんな時期に「なんのために会社をやっているのだろう」と考えはじめました。これにはきっかけがありました。ある社員から「社長は何で“きのとや”やってるんですか」と聞かれたことでした。ありがたいことにこの問いかけをきっかけにして「そういえば俺は“きのとや”をなんのためにやってるんだろう」と真剣に自らに問うようになっていきました。「自分が金持ちになりたいと思ってやっているのか?いや決してそうじゃないよな」と。「もしそうだとしたら、いま会社売ってしまったほうがメリットあるかもしれないな」と。「でも自分のためかと問われればそうではないな」と。じゃあ、何のためなんだろうって。やっぱりいきついたところは「社員のため」なんだということでした。きのとやで働くことによって生活の糧を得ている社員が目の前にいるわけです。そこで「そうか、社員のためだったんだ」と心からわかったのです。

いい会社を作ることを社是にした時からすべてが変わった

社是を「いい会社を作りましょう」に変えました。ではいい会社っていうのはどういうことを言うのかというと、1番目の条件は「社員とその家族の幸せを実現すること」だと思っています。これがきのとやが存在する一番の目的だと考えています。「お客様に満足と感動を提供すること」はむしろ2番目なんだと明確に示しました。そうしてこうした考え方が私の心のなかで固まっていく中で、人件費とは経費でなく目的なのだということに思い至りました。人件費とはトータルのコストであり、これをなるべく多くするのが当社の経営の目的であるという考え方です。経費と考えたらどうやって減らすかって考えてしまいますが、人件費はコストダウンの対象ではなくてこれを増やすことが会社の存在目的そのものですので、どれだけたくさんの人件費を確保することができるかということ、つまり人にどれだけたくさんの給料を払っていける会社になるかが大切なのです。会社の存在目的はここにあるのだと思っています。

親子二代で実現する壮大な夢「札幌をスイーツの街にする」

チーズタルト専門店を手掛けるBAKE(東京・目黒)を2013年に長男の真太郎が設立。私は仕事人間でしたが彼は私の後姿を見て育ちました。彼が小学校高学年の頃に、当社は食中毒事件を起こしました。彼は子供心にそんな私を見ていたのでしょう。それから「札幌をスイーツ王国、菓子王国にするんだ」と業界の先頭に立つ私を見ていた。後から聞いたら「自分もその手助けがしたい」と大学でも言っていたそうです。彼が言うにはスターバックスコーヒーやタリーズコーヒーはシアトル発祥。創業の店はたいしたことない(笑)けれども世界中にお店があって、シアトルは事実「コーヒーの街」になっている。「札幌をスイーツの街にする」ということは、世界に出ることによってシアトルのように札幌をスイーツの街にしていくことに結びつくんだ、と。スタバだってタリーズだって世界に出ることでシアトルをコーヒーの街にしたじゃないか。世界に出なければ世界の人に認知されないじゃないか。北海道がスイーツ王国にするためには北海道で作ってそれを全世界に輸出していくことだ、と。私は札幌をスイーツ王国、菓子王国にしたいと活動してきた。それを二代目である彼がさらに進めていこうとしています。

はえぬきの社長・専務・常務が私の誇り

現社長の佐藤誠は今から30年前に毎日お店に来てくれていたお客さんからの紹介で入社しました。専務の中田英史は学生時代にアルバイトをしていた縁で入社しました。常務の熊木真も20代後半に入社、ずっと私とやってくれています。この3人の足跡は私の誇りです。30数年間私と一緒にやってくれて今、社長・専務・常務をやってくれているわけですから。こんなに人材で恵まれているオーナー経営者はそういないのではないでしょうか。私は本当に恵まれていると思います。彼らが社長や専務、常務をやってくれていること、そういう社員にめぐまれたということが私の誇りなのです。3人3様ですが、基本的に皆真面目で、裏表なく、20代そこそこの社会人経験ない中で入社してきて、その後長沼イズムがずーっと浸透していっている。そして今、私が目指してきた経営を忠実に守って伸ばし続けてくれている。長沼昭夫という人間が20歳くらい若返って彼らがやっている、っていう感じなんです。そのさらに20歳位下にBAKE社長である長沼真太郎がいる。20歳ずつ世代のギャップがあって事業が承継されていくそんな形になっています。

編集後記

コンサルタント
高岡 幸生

私は子供時代から洋菓子きのとやのケーキを食べて育ち、同社が創業期に”お客さんが来ない”から始めた「ケーキの宅配」も自宅に毎月届いていました。長じてお知り合いになった株式会社きのとやの長沼会長は同窓の先輩であり、札幌をスイーツの街にする運動のリーダーであり、TVカンブリア宮殿にも出演、取材機会を戴けた事は光栄でした。今でこそ企業の人事に関わる取り組み(採用強化や退職防止)の記事を見かけることが多いです。しかし本取材で判るように長沼会長はずっと前から「経営目的の第1番は”社員とその家族の幸せを実現すること”」と考え、企業を発展させてきました。伸びる会社は人事を経営の最重要事項だと定義している。同社発展の秘密を見せて戴いた貴重な時間でした。

関連情報

株式会社きのとや 求人情報

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る