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原点はあくまでもプロダクト。そこから広げる地域、社会への取り組み。

株式会社シロ
代表取締役社長 福永 敬弘

更新日:2025年6月11日

1973年広島生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートに入社。雑誌編集長やメディアプロデュース責任者などを経て、2014年株式会社シロに入社。経営全般の戦略立案や新規・海外事業展開の実行を担う。2016年、専務取締役就任。2021年、代表取締役就任。ブランドのさらなる躍進に力を注ぎ、現在「SHIRO」は国内28店舗に加え、海外はイギリス、台湾、韓国にも店舗を展開。2023年には製造工場にショップやカフェなどを併設した「みんなの工場」を砂川市にオープン。「砂川パークホテル」の再生とフルリノベーションにも着手し、2026年オープン予定。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

「SHIRO」が生んだ、人と環境に配慮した循環型の施設。

コスメティックブランド「SHIRO」は、「自分たちが毎日使いたいものをつくる」という想いのもとで生まれました。製品の企画開発から製造、販売までを自社で行い、ブランドの世界観を体感していただけるカフェやホテルの運営なども手がけています。

SHIROの製品の生産能力を上げるため、創業の地・砂川市に新工場「みんなの工場」を建設しました。SHIROのものづくりをすべてご覧いただくことができ、ショップ、カフェ、キッズスペース、ラウンジなどを併設した人と環境に配慮した循環型の施設です。

2023年4月のオープンから1年で、お越しいただいたお客さまは約30万人。砂川市の人口は約1万5,000人ですから、すごい人数だと思っています。ただ、2年目は来場者数が下がっているので、課題はあります。

この施設へ来る理由は、ここでしか買えないものと、ここでしかできない体験があるから。そこが進化しているかというと、小さな粒感ではファッションショーを行ったり、ワークショップを増やしたりしていますが、お客さまに来ていただく強いきっかけにはなっていないのです。

お客さまの約4分の1は道外から来ていただいています。道外、道内各地から、何度も来たいと思っていただける動機づけを、テーマパークのようにアップデートしながら考えているところです。

「みんなの工場」を集客のハブとし、地域に勇気を。

「みんなの工場」が初年度に目標として掲げた年間入場者数は150万人。壮大な目標ですが、ここをつくるにあたって参考にした施設の事例に基づいた数字です。ですから、そこに達するまで150万人という旗を下ろすことは考えていません。

この施設は、いわゆる観光資源になり得るという点が大きいと思っています。例えば、施設内に用意している「おでかけカード」は、砂川市周辺のおすすめスポットや飲食店などを紹介するもので、それを利用いただくことで集客のハブになりました。

それでも、観光客の砂川市における滞在時間はそれほど変わりませんでした。なぜなら、宿泊を伴わないからです。通過点ではなく、もう少しとどまってくれるような工夫をするため、当社が経営を引き継いだ「砂川パークホテル」のリニューアルプロジェクトを進めています。

さらに、ここでしか食べられないものを提供できるよう、「みんなの工場」敷地内に食と空間の感動体験を創造する薪火レストランをオープン予定です。砂川での取り組みは第2フェーズに入り、滞在型のまちに変えていきたいと考えています。

「みんなの工場」を150万人が訪れるような施設にすることで、観光客と滞在時間が増え、さらには移住者も増えてこの地域が豊かになる。人口の100倍の人が来ることによって、砂川市に勇気を与えたいという想いが根っこにあります。

本気で取り組む地域創生。それは事業にも必要なこと。

砂川市へのふるさと納税では、SHIROの製品も返礼品となっています。SHIROを通じた寄付総額は12億円(2024年7月時点)ほどになっており、義務教育における給食費無償化、18歳までの子どもの医療費全額助成などにつながっています。

そうした補助があることで子育て環境が変わり、人が移り住むようになるので移住には大事なポイントといえます。人口増は難しくとも、人口減に歯止めをかける取り組みをしていかなければなりません。

砂川で創業した当社にとって、この地域に盛り上がってほしいという想いはもちろん強いものがあります。同時に、人口減は事業にとっても影響が大きく、今は工場の人手が足りず、需要に対して供給が追いついていない状態です。その対策としても必要なことなので、僕らは地域創生に本気で取り組んでいます。

さらに、砂川市での取り組みを踏まえ、「ほかの市町村でもできることはないか」という考えも広がっています。その一つが、長沼町に2024年4月にオープンした一棟貸しの宿泊施設「MAISON SHIRO(メゾンシロ)」。少しでも地域の観光資源になればと思っています。

ほかにも栗山町と「ほっかいどう企業の森林づくり」の協定を締結するなど、“北海道”という捉え方で、地域とのつながりを深める取り組みを進めています。

ホテルにサ高住も。本業で得た利益は地域のための投資に。

「砂川パークホテル」での仕掛けも、この地域にとって新たな動きになるはずです。1986年に市民有志がお金を出し合ってつくったこのホテルは、地域のシンボルとして親しまれてきたものの、業績不振や老朽化で存続が危ぶまれていました。

そうした状況の中で譲渡の話をいただき、地域のためにホテルを残したいという想いから譲り受けることにしました。リノベーション後、2026年秋にオープン予定で、新たに温浴施設とSHIROのアウトレットをつくります。

SHIROはこれまで値引きは一切していませんでしたが、資材に傷が入るなど軽微な不良品が工場ではどうしても出てきます。そうした製品を扱うショップを、収益の柱にしたいと考えています。

また、ホテルに隣接してサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を新築します。僕もそろそろ “終の棲家”について考えるようになり、自分たちが年老いた時に本当に住みたいと思える施設をつくろうと思いました。化粧品のプロダクトも、自分たちが使いたいと思っているものをプロダクトアウトしているわけですから、サ高住も同じ発想です。

ホテルとサ高住を合わせて、投資額は27億円程度になる予定です。でも、それを回収しようとは考えていません。SHIROとして利益をきちんと出し、それを僕らは投資して、地域にお金が回るようにすることが大切だと思うからです。もちろん、赤字では続きませんので、日々の利益を生む仕組みはつくります。

売り上げ世界一は砂川本店。ここでできることがもっとある。

屋台骨の化粧品事業は、海外展開も含めて3年サイクルで考えています。ホテルなどの事業はプロではありませんから、そこはまったく気にせず、こうなったらいいなという絵だけを描いています。

当社の次の展開として、砂川市での雇用の面にもっと入り込んでやっていきたいとも思っています。僕らと同じように、市内の多くの企業も採用に苦戦していると聞きます。ふるさと納税を原資として、雇用と移住に関わることに行政と一緒に取り組んでいければと考えています。

実は売り上げでは、「みんなの工場」内にある砂川本店が国内外のSHIRO全店の中で一番です。この事実から僕らは勇気をもらっています。人口約1万5,000人で、周辺人口が最も少ないまちの店が世界一なのです。僕らがやっているのはブランドビジネスなので、そのブランドが生まれた“聖地”に来てみたいとお客さまが思ってくれるのは、本当に嬉しいことです。

SHIROには、地域でそういうことを起こせる力がある。ですから、砂川だからできないというような固定観念のない、突破力のある人材がもっと必要だと考えています。

SHIROのものづくりの想いを共有し、新たなプロダクトへ。

おかげさまで本業は順調に推移していますので、自分たちの考えに基づいていろいろな地域への投資は続けられると思います。それで地域に変化が生まれ、人が集まり、人が集まっているからさらに人が来る、という流れになってくれることを願っています。

本業で一番に考えているのは、プロダクトです。SHIROが生み出してきたヒット製品を超えるような新しいアイテムをつくり出したい。そのきっかけになるように、この5年ほど毎年、約110個の新製品を出し続けているのですが、お客さまに飛び抜けて支持をいただけるようなアイテムはまだ出ていません。

ですから、これから3年間は新製品にとにかく注力し、プロダクトでニュースをつくりたい。SHIROの原点はあくまでもプロダクト。すべての骨子は「もの」だと思っています。SHIROが大切にし続けているこうした想いを共有してくれる人たちと、ぜひ一緒に仕事をしていきたいです。

編集後記

チーフコンサルタント
宮崎 美晴

2023年に創業の地である砂川市に「みんなの工場」がオープンし、新たな人の流れが生まれました。施設内は日差しが心地よく、訪れた人々がそれぞれ自由に過ごせる場所だと感じます。

さらに、「世界中の人の交流の場にしたい」という強い意志を持って取り組む姿勢には、ものづくりと同様の本気度が感じられ、感銘を受けました。本業での利益の一部を地域活性化に投資することで、未来の子供たちが誇れる場所が生まれることでしょう。

ホテル、レストラン、サービス付き高齢者向け住宅といった同社の新たな挑戦を引き続き応援していきます。

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