2026.10.13
インターステラテクノロジズ&北海道スペースポート訪問レポート
こんにちは。リージョナルキャリア北海道のコンサルタント、續 似洋です。
2026年9月2日、北海道・大樹町にあるインターステラテクノロジズ株式会社の本社と、同社も使用する射場「北海道スペースポート」を訪問しました。
インターステラテクノロジズは、小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の初号機打上げに向けた準備を進めています。今回は本社でロケット開発・製造の現在地と、いま採用したい人材についてお話を伺い、あわせてZEROが打ち上げられる射場「Launch Complex 1(LC-1)」も見学させていただきました。
「北海道で宇宙産業に関わりたい」「これまで培ったものづくりの経験を、まだ形になっていない産業で活かしたい」――そう考えている方に向けて、現地で見聞きしたことをレポートします。

インターステラテクノロジズ本社への訪問
宇宙インフラを一点ものの「作品」から「工業製品」へ変える会社
インターステラテクノロジズ株式会社は、2013年に事業を開始した日本の民間宇宙輸送のリーディングカンパニーです。本社は北海道広尾郡大樹町。ほかに帯広支社、東京支社、東北支社(福島県南相馬市)を構え、メンバー数は378名にのぼります(2026年8月時点/社員・アルバイト・インターン281名、業務委託・派遣97名)。
同社の名を広く知らしめたのが、観測ロケット「MOMO」です。全7回の打上げに挑み、2019年のMOMO3号機で国内の民間企業単独として初めて宇宙空間への到達を達成しました。
現在の主力は、小型人工衛星専用の打上げロケット「ZERO」です。全長32m、全備重量71tの2段式ロケットで、低軌道に最大1,000kgの衛星を運ぶ能力を持ちます。特徴的なのが燃料で、民間ロケットとして世界で初めて液化バイオメタンを採用。しかもそれは、地元・十勝の家畜ふん尿由来のバイオガスから製造されたものです。北海道の一次産業が、そのままロケットの推進剤になっています。
さらに同社は、ロケット事業と人工衛星事業を自社で併せ持つ「垂直統合」を掲げています。運ぶ手段(ロケット)と運ばれるもの(衛星)の両方を握ることで、日本発の宇宙インフラを事業として成立させようという構想です。
2026年1月にはシリーズFで総額201億円の資金調達を完了し、累計調達額は446億円に到達。主要株主にはウーブン・バイ・トヨタ株式会社、丸紅株式会社、株式会社三井住友銀行、株式会社NTTドコモなどが名を連ねます。同社が掲げるビジョンは「宇宙産業に変革をもたらす」。宇宙インフラを一点ものの"作品"から"工業製品"へと構造変革させ、自動車に続く「次の産業」をつくるという宣言です。
その変革が具体的に進んでいるのが、大樹町の製造現場でした。
設計から製造へ。インターステラテクノロジズがいま採用したい人材
ZEROは初号機の打上げ準備が進み、すでに複数の衛星の搭載が決まっています。開発の重心は設計から製造へ移り、生産技術・製造・生産管理のニーズが全社的に高まっています。
製造部門のマネージャーの方は、こう話します。
「東京の設計側のポジションは、人数を大量に採るというより質・ピンポイントの採用なので一定満たされてきています。一方で今の当社のフェーズは、製造でどんどん人を増やして組織を大きくしていくところなんです。」
2030年頃に年5〜10機の打上げを目標としており、今の人数では全然足りないというのが率直な現状でした。現在、製造部門は約30名。この目標を見据えて、40〜50名体制まで増やす計画です。年10機を超えれば、毎月1台以上のペースでロケットを送り出すことになります。工場の新設も検討されており、人材ニーズはさらに広がっていく見通しです。
募集の中心は、溶接・加工・組立の「現場」
「ロケットの会社」と聞くと、航空宇宙工学を修めたエンジニアの世界を想像するかもしれません。しかし、いま最も枠が大きいのは溶接・加工・組立といったものづくりの現場です。
- 組立・組付:溶接済みのタンクと完成したエンジンをロケット全機の形に組み付け、ハーネス(配線)の取り回しまで担う工程です。職種の枠としては最も大きく、「ほぼいろんな組み立て経験が活かせる」とのこと。(ロケット全機 組付けオペレーター(メンバー/リーダー)
- 溶接:これまで外注に頼ってきた領域を、大型設備の導入とあわせて内製化していくフェーズです。使用するのはTIG溶接。「どういう溶接をやってきたかに、あまりこだわりはありません。とにかく溶接に興味があって、なんとなく溶接がこういうものだと分かっていてくれれば十分です」という言葉が印象に残りました。ただし選考では「どういう材質の、どういうものを溶接してきたか」を聞かれることがあります。アルミと鉄では溶接条件が変わるため、経験の中身が配属の判断材料になるからです。(タンク製缶設備オペレーター(メンバー/リーダー)
- 加工:外注していた難易度の高い部品の内製化を、ゼロから立ち上げている段階です。経験豊富な方であればチームリーダー、あるいは素材ごとの加工法の検討(一般企業でいう「製造技術」に相当)まで任せられる余地があります。
生産技術・生産管理・設備保全・試験にも枠がある
現場作業以外にも、製造を支える職種が幅広く募集されています。
- 生産技術:加工・溶接領域と、組立・組付領域の2グループ体制。社内的にニーズが高いのは組立の生産技術です。各システム(構造・推進・アビオニクス・メカトロニクス)からの要求を統合し、治具設計から工程整備・不具合対応までを一貫して担うため、現場最前線でリーダーを務めた経験が求められます。(生産技術エンジニア_機体組付け)
- 生産管理:ロケット1機の部品点数は数十万点。「車1台とロケット1台がほぼ同じくらい」という規模です。ここで重要なのは、設計変更に臨機応変に対応できることでした。「今のフェーズは開発なので、途中で設計変更が入ります。品目が固定化されていて変わらない環境のご経験だと、やり方がまったく変わってきます」。自動車や航空機など乗り物系、なかでも「試作」の領域を経験してきた方がフィットしやすいとのことです。拠点間物流も頻繁に発生するため、物の移動まで見られる方は歓迎されます。(生産管理(大樹))
- 設備保全・メンテナンス:工場が拡大していくなかで、新たに立ち上がってきたニーズです。工場設備に加え、射場や試験場の保守点検も発生します。「工場は共通なので、エアコンの室外機や動力機器はそんなに変わりません」という言葉のとおり業種は不問で、プラント系・ケミカル系・食品系などの工場設備経験に汎用性があります。屋外プラントの経験は、試験場側で活きます。
- 試験オペレーション:LC-0(旧射場)の設備を使ったエンジン燃焼試験の現場です。ZEROは1機あたり10基(1段目9基+2段目1基)のエンジンを必要とするため、試験体制の増強が急務。工具を使って現場の段取りができる方であれば、若手も対象となります。
このほか、品質管理、ネットワーク設計・メンテナンスエンジニア(地上設備)、管制システムエンジニア、構造系コンポーネント設計エンジニア、帯広勤務の機械設計エンジニア・エンジン/ターボポンプなどのポジションも募集中です。
トヨタから「量産の型」を受け継げる、いまだけの環境
同社の製造現場には、もうひとつ他社にない特徴があります。2025年に開始したトヨタ自動車・ウーブン・バイ・トヨタとの業務提携にもとづき、製造・生産技術・設備試験の各領域に、20年以上の経験を持つトヨタからの出向者が入っていることです。
彼らのミッションは、ロケットの量産化に向けた仕組みづくり・組織づくり。つまり「教える側」として現場にいます。
「まずは1品物を作って、これをどう量産していくかを本当に一緒に考えながらやっています。そこで知見を得ながら、また教える人を育てて――という伝承をしながら進めています。」
自動車という「量産の完成形」を知る技術者が現場にいて、まだ量産の型が定まっていないロケットの製造をともに立ち上げていく。宇宙とものづくりの両方に関われる環境として、かなり希少だと感じました。「ニュースペースのベンチャーで、製造をここまでガンガンやっていく会社はあまりないと思っています」という同社の言葉にも、納得感がありました。
そしてこの構造は、キャリアパスにも直結します。組織が数十名規模へ拡大するにつれて、マネジメントのラインも増えていきます。
「今入っていただいて3年、4年と経験を積んでいただくと、2030年代にはマネジメントのポストが空きます。そういったところをやっていただけるチャンスは多いと思います。」
「製造業はすでに大きな組織ができあがっていることが多いけれど、うちはまだこれからなので」――役割が固まりきっていない今だからこその余白が、そこにはありました。
宇宙・航空の経験は必須ではない
採用の考え方について、全ポジションに共通するものとして伺ったのがこの言葉です。
「細かいポジションへのこだわりというよりは、本当にものづくりがしたい。そこさえフィットすれば、どこかしらご用意はできます。」
実際、現メンバーにも「たまたま近所に引っ越す予定があった」「移住先で仕事を探していて見つけた」という入社経路の方も少なくありません。宇宙・航空の尖った経験を持つ人ばかりの組織ではありません。
勤務地は大樹町が主眼ですが、帯広に住みながら通っている方もいます。
入社後も適性を見ながら配置を調整しており、最初の配属で決め切らない柔軟さがあります。まず飛び込んでみて、そこから自分の居場所を見つけていける現場だと言えそうです。
ロビーに並ぶ、失敗と到達の記録
本社の社内も見学させていただきました。1階のロビーには、同社のこれまでの歩みが写真とともに紹介されています。
2018年のMOMO2号機の打上げ失敗の写真。そして翌2019年、MOMO3号機が国内の民間企業単独として初めて宇宙空間に到達したときの写真。成功だけでなく、失敗もそのまま並べて掲示されていることに、この会社の姿勢が表れているように感じました。
インターステラテクノロジズ本社1階のロビーにあるこれまでの歩み
インターステラテクノロジズ本社1階のロビーにある2018年のMOMO2号機の打上げ失敗の写真
インターステラテクノロジズ本社1階のロビーにある2019年のMOMO3号機が民間単独開発で国内初となる宇宙到達を達成した写真
さらに奥には、ロケットに使われている部品も展示されていました。写真に写っているのは、ZEROのエンジン用ターボポンプインペラやガスジェネレータなどです。この一つひとつを、大樹町の現場でつくっているのだと実感しました。
インターステラテクノロジズが開発するロケットに使われている部品
北海道スペースポート射場見学
北海道に「宇宙版シリコンバレー」を。北海道スペースポートとSPACE COTAN
北海道スペースポートは、大樹町にある商業宇宙港です。運営を担うのは、2021年4月に設立されたSPACE COTAN株式会社(本社:大樹町西本通、代表取締役社長兼CEO:小田切 義憲氏)。大樹町と連携しながら、射場・実験場の設計・建設・管理運営、ロケット打上げのサポート、宇宙ビジネスのコンサルティングなどを手がけています。
社名の「コタン」は、北海道の先住民族であるアイヌの言葉で「集落」を意味します。ロケットを中心に、業種を越えて人が集まってくる場所をつくる――「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンが、その名に込められています。
大樹町が宇宙港の適地とされる理由は明快です。東と南が太平洋にひらかれた発射軌道を持ち、航空路や海路が少ない。加えて「十勝晴れ」と呼ばれる高い晴天率があり、オンタイムでの打上げが可能。そして拡張の余地がある広大な敷地。インターステラテクノロジズの本社工場から射場までは車で15分と、製造拠点と射場が近いことも開発・運用面での強みになっています。
施設は、観測ロケット用射場・実験場の「LC-0」、人工衛星打上げロケット用の「LC-1」、高頻度打上げに対応する官民共用射場として計画中の「LC-2」、そして1,300mの滑走路で構成されています。滑走路ではドローンや空飛ぶクルマの飛行実験も行われており、宇宙だけでなく航空分野の実験拠点にもなっています。
今回は、SPACE COTAN株式会社 事業運営グループの黒瀬 航さんに、LC-1をご案内いただきました。黒瀬さんは国土交通省で港湾・空港の整備に携わったのち、2022年に北海道へUターン。北海道宇宙サミットの聴講をきっかけに宇宙産業と出会い、2024年3月にSPACE COTANへ参画されたという経歴の持ち主です。
ZEROが打ち上げられる射場「LC-1」の今
ZEROの打上げが行われるのが、北海道スペースポートのLaunch Complex 1(LC-1)です。
LC-1は人工衛星の打上げに対応した小型ロケット用の射場で、LP11・LP12という2つの射点を有しています。LP11にはロケットを組み立てる組立棟、ロケットおよびペイロードに推進剤等を供給するタンクヤードなどが備えられています。
2026年7月時点で、主要な発射台・火炎処理道・推進剤プラントの大部分を含むコア構造要素が完成。ロケット組立棟と周辺統合エリアの建設も並行して進んでおり、射場全体の工事完成は2027年第1四半期を予定しています。
写真でお見せできないのが残念ですが、これらの設備はほとんど完成しており、素人目で見ても「射場の形」になっていることがはっきり分かりました。2025年5月に訪問した際はほぼ何もない荒野という印象でした。それが今回(2026年9月)の訪問では景色が一変しています。ロケットだけでなく、それを打ち上げるための地上のインフラもまた、着実に積み上げられているのだと実感しました。
現地の様子は、インターステラテクノロジズが公開している動画でご覧いただけます。ZEROの開発進捗とあわせて、LC-1がいまどこまで形になっているかがよく分かる内容です。
▼Inside ZERO | Launch Complex 1 Update(インターステラテクノロジズ公式YouTube)
LC-1の完成イメージ。
LC-1着工前の写真。何もない海岸線の風景が広がる。
「ギャラリーが集まるうちは、まだ産業ではない」
黒瀬さんの言葉で最も印象的だったのが、これでした。
「ロケットの打ち上げにギャラリーが集まるようでは、まだ産業とは呼べない。」
世界に目を向けると、アメリカ・フロリダ州では2025年に100回を超える打上げが行われています(※)。地域住民にとってロケットの打上げはすでに日常であり、わざわざ見に行こうとする人はほとんどいないそうです。
宇宙産業はよく航空業界と比較されますが、「飛行機の離陸をわざわざ見学しに行く人がいるか?」と考えると、イメージしやすいかもしれません。空港から毎日当たり前に飛行機が飛び立つように、宇宙港からロケットが打ち上がる。それが実現して初めて、宇宙は「産業」になる。
ロケットの打上げを、非日常から日常に。北海道・大樹町でもフロリダのように日常的にロケットが打ち上げられる、本当の意味での産業となるために。挑戦を続ける方々の姿が、そこにはありました。
事故や困難を越えて、宇宙の専門家だけで成し遂げられるものではありません。溶接ができる人、組み立てができる人、工程を管理できる人、設備を守れる人――これまで日本のものづくりを支えてきた一人ひとりの技術が、そのまま宇宙産業の土台になります。
北海道で、次の基幹産業をつくる現場に立つ。そんな選択肢に少しでも関心を持たれた方は、ぜひ一度ご相談ください。今回の訪問で伺った現場のリアルも交えながら、詳しくご説明させていただきます。
※引用元:JETRO ビジネス短信
※情報参照:インターステラテクノロジズ株式会社/同社ニュース「動画『Inside ZERO|Launch Complex 1 Update』を公開しました」(2026年7月23日)/北海道スペースポート(SPACE COTAN株式会社)
※訪問実施日:2026年9月2日
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